2012年1月8日
この冬休みに新幹線の中で暇つぶしに読んだ「ニュースに騙されるな」(椎名健次郎著)は意外な切り口の本で退屈せずに済んだ。著者はもともとテレビ業界の政治担当記者でその後ネット企業に転職したという経歴の持ち主だ。テレビや新聞の政治記者が記者クラブの仲間内で官製報道に頼ったニュースしか流していないということはしばしば言われていることだ。その実態を具体的に明らかにしている。ここまでの話であれば他にも書かれていることだが、それ以上に驚いたのは、ネット企業での実態だ。人事管理は存在しないに等しいらしい。要するに人材は消耗品として扱われて勝ち残ったものだけが上に昇進するというわけだ。転職も激しいらしい。人材の話もさることながら、ネット企業でのニュースは自前のものではなくて既存メディアのものを仕入れてそれを流しているだけとのこと。既存メディアが人と金を使って仕込んだニュースを安く買い取ってネットで流して広告収入を得ているのだそうだ。そういわれてみれば確かにヤフーとか楽天、ディー・エヌ・エーの独自の取材のものはないな。著者は、ニュースを責任をもって仕入れる担い手がいなくなって質の劣化が進むだろうと予測している。「ニュース(情報)は只ではない」というのは確かにその通りだ。誰がそれを担うのかというのは、言われてみて初めて気がつく問題提起だった。
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